起業するならJFC 日本政策金融公庫の事業資金融資の特例制度で経営者保証は免除できる!

ビジネスハック

事業資金融資はJFCで経営者保証を免除しよう

STEP.1 本投稿を執筆する目的

本ビジネス編のカテゴリでは、
(私が)起業に必要な経営知識・スキルを備忘録として記録し、
これを私のブログ資産に活用するとともに読者へその経営知識・スキルを還元することが目的だ。

なお、本ブログの記載事項の参照や活用は読者の自己責任の元でご活用願いたい。
ご質問などはお気軽にご一報・ご連絡頂ければ幸いである。

STEP.2 事業資金の借り入れへの誤解

個人で起業を目指して開業資金や運転資金を金融機関から借り入れる場合には、
たとえ法人でも経営者個人の名義での借り入れを余儀なくされるもの。

私も(世間一般と同様に)上記のように思っていたが、次から述べる内容で誤解が解けた。

STEP.2.1 経営者保証による経営者個人の連帯保証が開業や事業継承を妨げる

そして、ごく最近まで法人の事業借り入れ時に、
法人による返済保証以外に貸主の金融機関との間で経営者個人の経営者保証という連帯保証を契約させられた。
上記は企業経営者が本人の家計へ事業資金を貸し出すなどの癒着が度々あり、
貸し手である金融機関として返済の担保を強化する目的とした商慣習であった。

    [参照・出典元] “会社が倒産したら自宅も土地も貯金もすべて処分して借金返済!? それって本当なのか(三戸 政和) | +αオンライン | 講談社(1/3) (gendai.media)

しかし事業資金の担保を個人に対する返済保証で担わせることが、
家族経営が多い中小企業や個人事業が事業継承・継続不能に直面する状況を助長した。
これは経営者の高齢化による経営不能と少子化による後継者不足という環境が下地になっている。

STEP.2.2 経営者保証を抑制する”経営者保証改革プログラム”策定とその効果

政府(金融庁)はこうした事態に対処するために2022年12月に経営者保証改革プログラムを策定した。
経営者保証の適用条件(明確な理由付けの要求等)を付与して経営者個人による担保責任を抑制するのが目的だ。

続いて経営者保証改革プログラムについて金融機関等に対して要請(以下1)も実施している。

また上記の中で「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」に触れているが、
この中の「II 銀行監督上の評価項目」に含む指針(以下2)は経営者保証改革プログラムを補強するものだ。

  1.  個人保証に依存しない融資慣行の確立に向けた取組の促進について
  2. II-10 「経営者保証に関するガイドライン」の融資慣行としての浸透・定着等

また指針(2)の中で記述される項目(5)と項目(6)は特に注目すべきで以下のように要約できる。

  • 経営者保証を求めない可能性等を債務者の意向も踏まえた上で検討する態勢の整備
  • 経営者保証を求める場合に債務者へ客観的合理性を伴う説明を実施・記録する態勢の整備

上記2点は金融機関が債務者(経営者)に対して従来の慣行通りに経営者保証を求める行為を抑制する。
ただし当然ながら債務者側の健全な財務状況および法人・個人の一体性の解消という前提があることは留意したい。

STEP.2.3 金融庁による”経営者保証改革プログラム”の推進状況

金融庁は経営者保証改革プログラム策定後の活用実績や実態調査等を以下のように実施している。

  1. 金融庁|「経営者保証に関するガイドライン」等の活用実績について
  2. 金融庁|「経営者保証に関するガイドライン」等の実態調査結果について
  3. 「経営者保証に関するガイドライン」等の実態調査結果 主なポイント(PDF:160KB)
  4. 「経営者保証に関するガイドライン」等の実態調査結果 本文(PDF:534KB)

経営者保証改革プログラムの効果を知るには、上記1の活用実績についてを参照して頂き、
そこに添付されている以下の活用実績グラフをご参照願いたい。

第一に、上記活用実績の1ページ目では新規無保証融資の件数および部分割合を縦棒グラフで示している。
まず最初に、この縦棒グラフでは最初に融資件数の近い2020年と2023年を見比べてみたい。
2020年はコロナ禍による融資の急増期(1,014,223件)、2023年はコロナ禍からのリバウンド期となるが、
新規無保証融資件数割合は2020年で27.6%、2023年で47.5%と経営者保証なしが20%近く伸びている。

そして次に、別の見方として部分割合に注目すると経営者保証改革プログラムの適用前の2022年が33.9%であり、
2015年から2022年までは2~3%程度の改善幅だったが、2023年になって一気に14%近くまで広がった。
上記からも金融機関への経営者保証改革プログラム策定の効果が分かるだろう。

第二に、上記活用実績の2ページ目では代表者交代時の保障徴求割合の推移を横棒グラフで示している。
こちらの横棒グラフでは”旧経営者保証なし・新経営者保証あり”の分類に着目してもらいたい。
この分類では2017年から2021年まで一貫して~6%の増加幅で推移していることが分かる。


また2023年では2021年と比較して10%もの減少幅で経営者保証改革プログラム策定の効果が見て取れる。
少し気になる点は”旧経営者保証あり・新経営者保証なし”の分類での割合について、
2017年から2018年の間で11%近くもの増加幅だったことだ。
上記の点について現時点では私には不明だ。

STEP.3経営者保証以外にも注意すべき根保証

STEP.3.1 根保証の概略と利用の意図

根保証は「保証人が負担する金額を定めない契約」のことで経営者保証と同様に対個人の債務保証だ。
根保証が生まれた背景をひと言で表すと「手間とコストを回避したい」となるが、かみ砕いた説明は以下となる。

    [参照・出典元] “根保証(ねほしょう)契約とは?中小企業が理解しておくべきポイント

  1. 融資契約毎に連帯保証人を用意するための(保証)契約の手間やコストが大きくなるのを避けたい
  2. 異なる金額や複数の締結回数に渡る契約の手間やコストを省きたい
  3. 取引基本契約では保証債務の算定が難しい(不定な毎月取引額の)場合の融資要請にも対応したい

上記は主に債務債権両者の融資利便性に起因する。融資契約時に発生する手間とコストを削減するのが狙いだ。

STEP.3.2 連帯保証人に対して過剰な債務を課す”根保証”に対する制約

このように根保証は連帯保証人に対して過大な負担を課していた状況だったところに、
2020年4月1日施行の改正民法で以下の2つの制約が課され、違反時は契約無効となる。

    [参照元] 民法第465条の5 – 保証人が法人である根保証契約の求償権

  1. 保証限度額であるる極度額の設定義務(違反時は契約無効)
  2. 元本確定期日の設定義務(未記載時は3年とみなし、最大限5年で超える場合は契約無効)

上記1は保証人に対して無制限に負債額を課すことを防ぎ、2は無期限に負債額を増額することを防ぐものとなった。
(これ以外の、債務者死亡時の保証継続に対する制約などの保護要件等は、各自でご確認頂きたい)

STEP.3.3 信用保証とプロパー融資による経営者保証の二重徴求

信用力の低い(起業直後や規模が小さい)起業は融資契約時に金融機関側から保証協会との契約(経営者保証)締結を要請される。
その後に(本来なら保証なしの)プロパー融資を当該金融機関より協調融資を受ける際にも経営者保証が求められていた。

  [参照・引用元] 金融庁|「経営者保証に関するガイドライン」等の実態調査結果 主なポイント(PDF:160KB)

これらは事実上は同じ融資契約で二重の保証契約を債務者が求めらた(二重徴求)。
しかし現在は、平成30年4月の保証制度の見直しにより二重徴求を禁止されている。

STEP.3.4 根保証と経営者保証との関係性

これまでの内容の中で根保証の根本に経営者保証が存在することを述べてきた。
この点について、金融庁が発表した以下資料の4ページ目「根保証の利用状況と経営者保証の関係について」でも、
根保証経営者保証の一体性について述べられている。

    [参照・引用元] 金融庁|「経営者保証に関するガイドライン」等の実態調査結果 主なポイント(PDF:160KB)

そこでは根保証の利用率の高低それぞれで見られる金融機関の特徴を挙げているが以下に要約する。

  1. 根保証の利用率が高い金融機関では、利用制限や継続的な契約見直しを行っていない傾向がある
  2. 根保証の利用率が低い金融機関では、利用制限や禁止を行ったり定期的な契約見直しを行う傾向がある

上記からは、融資先の個人(経営者)の財務状況や利用頻度の把握に対する金融機関側の態度が見えてくる。
また、上記資料の中では以下のような”気付き”にも触れている。

  • 根保証の利用で、顧客の利便性を一定程度確保できるとの意見がある
  • 一方、根保証の不利用は、事業者と接する機会が増加し、直近の業況の把握やリレーションの構築等が図られるとの意見も聞かれた。

上記に対して私の個人見解は以下に示すが、根保証の運用は適正な範囲(起業後の2~3年等)かつ債務上限の適用が望ましいと感じられた。

  • 経営者と金融機関の双方が融資契約を持続可能に履行することが大切である
  • 融資契約の持続可能性は、債務者側事業の財務状況および持続可能性を金融機関と適切に把握することで担保される

STEP.3.5 金融庁の監督方針と是正措置

ここまで経営者保証根保証の背景や金融庁からの規制について見てきた。
起業を志したり事業継承を迫られたりと様々な理由で事業を行なおうとする者からすると、
経営者保証だけでなく根保証によっても事業資金融資を獲得するハードルが相当に高められていた。

しかし、2022年12月に策定された経営者保証改革プログラムによってこれらは事実上の緩和・撤廃へ進んでおり、
なおかつ以下のように業務改善命令の発出条件まで述べられている。

  • さらに、監督上の対応として、内部管理態勢の実効性等に疑義が生じた場合には、
    必要に応じ、報告(法第24条に基づく報告を含む。)を求めて検証し、業務運営の
    適切性、健全性に問題があると認められれば、法第24条に基づき報告を求め、又は、
    重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出する
    ものとする。

また金融庁は、経営者保証改革プログラムの策定を受けて、令和5年4月1日より監督指針の改正を行った。
そして金融機関に対する検査・監督としてフィードバックするための保証人へのヒアリングを開始し、
専用窓口である経営者保証ホットラインを開設している。

    [参照・引用元] 経営者保証ホットラインの開設について:金融庁 (fsa.go.jp)

    [ホットラインへの電話番号] 570-067755(ナビダイヤル)/03-5251-7755(IP電話)

上記によって債務者側の経営者保証に対する意見を政府へ通報するための施策が設けられたことで、
債権者側である金融機関等に対しての無保証融資へのけん制が大きく強まったといえる。

STEP.4 日本政策金融公庫の融資特例制度で経営者保証は免除できる!

STEP.4.1 日本政策金融公庫では経営保証免除制度が利用できる

ここまで述べてきた経営者保証について、様々な金融機関においても取り組みがなされているが、
日本政策金融公庫においても、事業資金融資について経営者保証免除制度を設けており、
金融庁による経営者保証改革プログラムが求める無保証融資の推進要件に即している。
ただし、経営者保証免除制度を適用する各融資制度の利率を積み増す(※0.3%以下)ことに留意が必要だ。

    [参照・引用元] 日本政策金融公庫の経営者保証免除特例制度について

上記については法人と代表者との一体性の解消を求める(公庫で確認できる)以外に以下の条件が設けられ、
経営状況の健全性を担保している。

  1. 税務申告を2期以上実施していること。また、公庫からの普通貸付または生活衛生貸付の借入がある場合は、公庫との取引の返済に問題(遅延)がないこと
  2. 次のいずれかの要件を満たす方
    1. 最近2期の決算期において、減価償却前経常利益が2期連続して赤字でないこと
    2. 直近の決算期において債務超過となっていないこと

STEP.4.2 日本政策金融公庫の開業資金融資制度は経営者保証免除制度を併用可能

この経営者保証免除制度を適用した中小企業向けの開業資金融資制度について、
日本政策金融公庫では専用の融資制度を設けている。
開業資金(設備資金および運転資金)の融資(※上限額=7200万円、うち運転資金が4800万円)を受けられる。
廃業後の再起業に対しても残債返済用の融資や運転資金融資の返済期間延長など手厚い支援を行っている。
詳細は以下のリンク先を参照願う。

STEP.4.3 日本政策金融公庫の事業承継支援制度でも経営者保証免除制度を併用可能

また、開業以外にも事業承継支援として以下の専用の融資制度も日本政策金融公庫では設けられている。
融資額や融資使途については上記開業資金融資支援と同等のようだ(詳細は以下のリンク先を参照)。

以上のように、日本政策金融公庫では新規事業の(再)開業や運転資金の積極支援制度を展開している。
これまで日本の事業参加・起業には相当のハードルや負担を伴っていた。
しかし、日本の国力低下が叫ばれるなか近年になってようやく、新規事業を開業・継続するための支援体制が整った。
冒頭の講談社ビジネスに寄稿した三戸政和氏や彼の書籍を推薦した堀江貴文氏らが勧める、
個人による中小企業買収および継承」を実現する環境が整ったともいえるのだ。

※: 2024年9月5日執筆時点の情報

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